はじめに
私が社長になったのは2008年です。当時はリーマンショックもあってマーケットも不安定でした。新しいことにいろいろ挑戦するのですが、なかなか成果が出ませんでした。本格的に軌道に乗ったのは、ようやく最近のことです。良くなってきたなという現場の雰囲気を今ひしひしと感じています。
人づくりの一番の取り組みは、みんなでしっかり話し合う場を積極的に設けたことです。常務以上の役員、幹部社員、店長やマネージャーの横のつながりとか、コミュニケーションの風通しが良くなったことが会社の強さに直接的につながりました。私のゴールは、全社員がそろってうちの会社が大好きだ、うちの会社を一番良くしたい、と思ってくれることなんです。会長としてこれほどこころ強いことはないですからね。人づくりの到達度は、今が一番いい状態にあると思います。
過去に厳しく数字を求めた北風の時代もありましたが、今は社員の自覚、やる気、チームワークに任せる太陽の時代です。下手をすると緩むので難しい面もありますが、良い商品を扱って、良いお店をつくり、それにふさわしい体制を敷いていますから、社員が明るく元気に一生懸命働こうという気持ちになりさえすれば、数字は必ず出ます。大事なのは、その目標をやりきるために本当にどうしたらいいかをみんなで一生懸命考え、実践することです。それさえできたら、お客様からは絶対支持され、数字も必ず上がり、チームのみんなも働いてすごく楽しいはずです。
実は、創立50周年を迎えた2016年1-6月の販売実績が対前年比で全国74あるカローラ店の中でトップになりました。日本一達成を祝って、店長・マネージャーと一緒にお酒を飲む機会を設けましたが、本当にみんな楽しそうでしたね。この喜びが全社に行き渡るよう、各店舗、地域でも夏にお祝いを兼ねて納涼会を開きました。人材確保の面では、人手不足で良い新入社員を採ることが難しくなってきています。地元の営業・技術・事務職の人材を確保するため、自前で県認可の職業訓練校を設立しました。
-
-
店舗はいま全部で31拠点あります。やはり人が重要なので、まず良い店長をちゃんとそろえました。良い店長とは、部下とのコミュニケーションが取れ、地域の皆様とつなぎあわせることができ、店の小さな変化を見逃さずにちゃんと手を打つことができる人です。そして一番大事なのは自分の次の店長をちゃんと育成することですね。仕事の上では、やはり情熱が大事です。若くてやる気のある店長が次々と出てきてほしい。私の仕事は彼らと直に接して、いろんな話をしたり、聞いてあげたりすることだと思っています。
人づくり研究会という店長クラスの集まりを今年からTOPGUN(トップガン)という意見交換の場に拡大しました。われこそがトヨタカローラ山口の将来を支えるんだという高い志を持った社員であれば、誰でもみんな来なさいと呼びかけています。とりあえず新車部門の35人ほどで2ヶ月に1回程度開いていますが、多くの社員に関心を持ってもらっています。私が話して質問を受けたり、優秀な営業スタッフやマネージャーが内部講師となって講演した後に意見交換しています。人づくりに取り組んで感じるのは、みんなこういう意見交換の場を強く求めている、とても悩んでいるということです。本社で開催する意味は、やはり本社には情報がたくさんあるし、ここに来て会社の全体像を広い視野で見てもらうことができるからです。
本社と店舗間、店の中でもコミュニケーションがまだまだ不足しています。これは永遠のテーマでもあり、今後も満足することはないでしょう。トップガンを始めたのは、そういうところに風穴を開けたいという思いからです。とても時間がかかりますが、成果がすぐに出なくても息長く、一生懸命やっていきたいと思っています。
-
-
-
お客様づくりという言葉は元々、トヨタ自動車のカローラ店営業本部が使われたと思います。常連さんづくりのこと、気楽に来店してくださるファンづくりです。これは人づくり、店づくりと密接に結びついています。ディーラーは小売業・サービス業ですが、外食や流通に比べて明らかに店舗形態の変化が少なすぎると私は思っています。50年もやっているのに店のあり方は何も変わっていません。 私はもう少しお店のあり方を変えなければいけないと考えています。これは次の50年に向けて早急に取り組まなければいけない課題の一つです。トヨタ自動車も同じようなことを考えておられます。プリウスなどはどのお店でも併売していますから、お店そのものに差がないと大きなアドバンテージは得られません。社員もそうです。お店そのものと社員の両輪が重要なのです。
具体的には、お客様にもっと気楽にどんどん来てもらって、長く居ていただけるような店づくりですね。お店の形態、機能そのものが変わっていかないといけない。たとえばTUTAYAさんがありますね。ショップが六本木とか代官山にあって、スターバックスが入って、高いコーヒーがたくさん売れて、お客さんは本を立ち読みしています。店舗を変えることによって、ただものを売るだけでなくて、同時に質の高い新しい生活文化を提案しているのです。
「創業者(卜部博文代表)は偉い」と私が思うのは、外食産業のサンデーサンを始めて、パフェなど新しい海外の食文化をここ山口から全国に情報発信したところです。そういうことをトヨタカローラ山口でもやってみたい。たとえ用がなくても、楽しそうだから出掛けてみようと思わせるようなお店を実験的に作ろうと考えています。2017年中には下松市の周南店を移転して、新しいお店のプロトタイプをオープンするつもりです。
-
-
-
私の目標は、受け継いだ時よりも良い状態で次の世代にこの会社を引き継ぐことです。それが私の人生の目的であり、夢なのです。そのために私は生まれて来て、ここにいるのです。その目的が達成できなかったら、死んでも死に切れないでしょう。そのためのリスク管理にも日々努力しています。人間は生身の体なので必ず死が訪れますが、会社はやるべきことがちゃんとできる人材がそろっていれば、事業をずっと続けることが可能なのです。
困った時にそれを乗り越えるガッツとか、知恵とか、リーダーシップを持った社員がたくさんいてくれさえすれば、会社は生き延びることができます。言われたことしかやったことがないというのではなく、自分の頭で考えて、困難な時代を生き抜く力を持った人たちをたくさん育成しておくということが、企業防衛につながるのではないでしょうか。
-
-
-
ここまで話さなかったことが一つあります。それは、私が大の車好きだということです。ちょっと押し付けでもあるのですが、私は社員の皆さんにも車を好きになってほしいのです。車って何て素晴らしいんだろうと思ってほしい。経済的な理由でシェアリングしたり、環境対応のためにハイブリッドや燃料が変わったとしても、車は車であることに変わりはありません。愛する車をどう扱っていくのかが大事なのです。自分たちの取扱商品に愛情を持って接することが大切だと思っています。
どんな時代がやって来るか分からないですが、トヨタカローラ山口にはこれからも車が大好きな社員にたくさん入ってきてほしいし、車を好きになってもらえれば、この上なくうれしいなと思います。そして、たとえ車が大きく変わったとしても車社会という視点で見たら、マーケットの変化に対してディーラーがやることは、基本的に今後も変わらないと考えています。
-
-
-
あまり大きな夢や目標はないのですが、トヨタカローラ山口の社員とトヨタカローラ山口に関わりのある地域の皆さんが元気で幸せに暮らしてもらえることが僕にとっては一番大事です。それがもう50年続くようにしたいと考えています。社員みんなが力を合わせて、ここまでトヨタカローラ山口を良い会社にしてくれました。社長は大きな権限と影響力を持っていますが、実際にやってくれるのはみんな社員なのです。
社長業はよく孤独だという人がいますが、私は一度もそんなことを感じたことがありません。創業者の代表の下で、恵まれた環境で社長になり、好き勝手にやらせてもらって、みんながよく話を聞いてくれて、みんなの話をよく聞いて、毎日を幸せに送れていますからね。風通しが良くて、一枚岩で、本音で話し合えるトヨタカローラ山口の社風がこれから50年経ってもさらに進化して、その分だけ今まで以上にみんなが幸せになれたらいいんじゃないですか。その幸せをトヨタカローラ山口の社内からお客様へ、地域へ、山口県内へと広げていくことができたら、こんなに素晴らしいことはないですね。
-
あまり大きな夢や目標はないのですが、トヨタカローラ山口の社員とトヨタカローラ山口に関わりのある地域の皆さんが元気で幸せに暮らしてもらえることが僕にとっては一番大事です。それがもう50年続くようにしたいと考えています。社員みんなが力を合わせて、ここまでトヨタカローラ山口を良い会社にしてくれました。社長は大きな権限と影響力を持っていますが、実際にやってくれるのはみんな社員なのです。